2016年5月30日月曜日

人体実験的干物作り

 神津島滞在の2日目。

 干物作りをする。





 突いたブダイを腹開きにし、海水に30分ほど浸し、干す。

 作り方は諸説あり、塩分濃度は10〜15%がいいと言っている人もいれば3〜5%がいいとか、海水で出来るとか、塩水でなく塩を振って干すなど、調べるといろいろ出てくる。
 また、漬ける時間も20分〜1時間以上と様々。これは塩分濃度と魚の種類によるんだろうけど、とりあえず最もシンプルに海水で作れるというものをやってみることにした。
 それによると、20分ほど漬ければいいとあるが海水濃度は3.5%ほどなので、10
〜15%の塩水に1時間漬けるというものとは随分と差がある。見比べていくと海水で本当に浸かるのかどうか少し怪しく思えてくるがやってみないとわからない。
 目の前に海があってそれを活かさないわけにはいかないという気持ちに突き動かされる。
 海水でやってみよう。ただ、漬ける時間を少し長めにみることにする。
 

ブダイの腹開き。水っぽい魚なので干して旨みが出ることに期待


 1日中天日干しし、海辺の潮風にさらす。午後になり、どこからともなく小蝿が集まってきた。醸し始めたのだろうか。魚の干され具合が気になって表面に触れてみる。まだまだしっとりとしていて全く干物らしくない。水分が多い分、数日は干さなければならないのかもしれない。



  夕方、また海に潜り、私は相変わらず一匹も突けなかったが、相方が、なんとイシガキダイを突いてきた。


 
 イシガキダイやイシダイ、クロダイなどは水深10m前後の場所にいる魚で、魚突きをやっていく段階で目標としてよく取り上げられ、イシダイを突くことができればスピアマンとしてそこそこの腕があるという風に見受けられる。5m以下で四苦八苦しているわたしにとってはまだまだ遠い魚であり、憧れでもある。
 そのイシガキダイを相方が突いてきたのだ。しかし、聞けば戻ってくるときに5m以下の浅場で見つけたという、ラッキーだったのだ。
 たまに、潮の流れなどの海の変化で浅場にいないはずの大物にお目にかかれるということがあるらしい。今回はまさに、そういうことだったのだと思う。
→相方に再度確認したところ、水深8mほどのところで見つけたらしく、いてもおかしくない場所で、特にラッキーではなかったようだ。また、イシダイ・クロダイなどは基本は沖の方にいるが潮通しによって浅瀬に来ることも稀ではないよう。私の聞き間違いの勘違い。。それにしたって私にはまだ手の届かない魚には違いないのだが。。

 
 イシガキダイはその日の晩、1/3ほどを食べた。刺身や塩をして焼き魚に。残りの身は全て干す。これらの身は塩を振って干してみることにした。



 イシガキダイは脂が乗っていて、焼き魚にするとなんともジューシーで美味しい。脂の甘みと塩気が相まってご飯がすすむ。こんなに美味しい魚があったのかと感激してしまった。
 ただ、イシガキダイにはシガテラ毒という毒があると言われていて、ある植物性プランクトンを食べることで毒が蓄積され、個体が大きいほどその危険性があるという。死亡例はほとんどないが、毒によって下痢や腹痛、吐き気、頭痛、痺れなどの症状が出ることがあるらしい。しかも、症状が重いと半年〜数年はその症状が続くらしく、それを聞くとちょっと怖い。
 しかし、それだけといえばそれだけ。シガテラ毒ではそう簡単には死なないので結構食べてる人は多いよう。なんてったって美味しいし。
 築地市場では大きいのは出回らないようだけど、九州とか沖縄では食中毒の報告が多いだけ、多分普通に食べているのだと思う。


 夕飯を終え、風が出てきた。今晩は大荒れの予報だったのだ。テントでしばらく過ごしていると、雨音がする。
 もう降り出してしまったか。
 急いで干しカゴをテント内に取り込むが魚が少し濡れてしまった。仕方がない。

 台風のような雨風が一晩中荒れ狂う。テントが持ってかれてしまうのではないかというくらい、激しく壁が揺れていた。

 朝になり、少しずつ風は弱まり、雨も静かになっていった。昼前にはすっかり止み、干しカゴをまた木に吊るす。
 晴れ間も見え、すっかりいい天気になってしまった。ただ、海はかなり波が高く、しばらくは潜れないだろう。


 昼に、昨日獲れたイシガキダイのエンガワとカシラあたりをいただいた。残りの半身はさらに干し、干物にする。

脂がとろけるようで激うま。頰肉も絶品だった


  午後の眩しい日差しを受け、干していた魚はあっという間に乾いていった。小蝿もまた、だんだんと群がってくる。一時はどうなるかと思ったが、順調に醸されているようだ。

 そして次の日、異変に気がついた。ブダイの匂いがおかしい。
 イシガキダイの方は、普通の干物の匂いなのに対し、ブダイは、ちょっと腐敗臭がする。。
 これ以上干してもしようがないと思ったので、その日の夜に食べてみることにした。

 


 見た目はいい感じの干物になっているが、、酒で戻し焼いてみるとアンモニアのような臭いが漂ってくる。。



  焼いたブダイの干物はパスタで和えて食べてみることにした。

 うーん、、干物の味ではあるが、ちょっと怪しい酸味がする、、?正直、臭いと酸味に邪魔されて、食がすすむ味ではない。。
 ちなみに、このパスタの中には初日に「よっちゃれーセンター」で買った魚のミンチも入っている。ちょっと痛み始めていたので、酸味の原因はどちらだろうか、それとも両方なのか。。
 なんとも複雑な味だったが、食べれないことはない。相方が半分以上食べてくれて、二人で食べきってしまった。
 その後、お口直しのボロネーゼパスタを食べ、後片付けも済んで眠りにつこうかとしていた時に、相方が突如腹痛と便意に襲われた。
 お腹を下したようだ。やっぱり、そうだったのだ。
 しかし原因はブダイなのか、ミンチなのか。
 また、わたしのお腹はなんともならなかったのも不思議だ。

 一つ言えることは、ブダイの干物は失敗したのだろう。敗因は、雨で濡らしてしまったことと、湿度の高い場所に一晩おいてしまったこと、そして魚に浸透した塩分が少なかったということだと思う。
 だからといって海水で作れないというわけではないと思う。もう少し長いあいだ海水に浸けておけば違うかもしれない。

 まだまだ奥が深い干物作り。もどかしいので、海水での干物作り、また挑戦しようと思う。
 

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