2015年5月17日日曜日

式根島キャンプー2日目ーその2【ウツボを捕る】

吹の江の海の中はあまりにもきれいだったので泳いでいるのが楽しくて、いつまでも泳いでいられる気がしたが、それでも体の冷えは感じるものだ。


海から上がるとすぐに全身が震えだした。



体に当たる風が冷たい。

荷物を置いている岩場に戻り、保温用に持ってきた化繊ジャケットを羽織る。
それでも震えは止まらないので岩の上に俯せに寝転がってみた。

岩が溜め込んだ太陽光の熱を感じる。
あたたかい。

風は強いが幸い陽は照っていて、寝転がっていると岩の熱と太陽の日差しが体を少しずつあたためてくれる。

そうして体を暖めながら岩場をごろごろし、目先にある潮溜まりの中をなんとなく眺めていた。

すると、岩の間を長いなにかがにょろっと通った。

ぼーっとしていたので何者なのか分からずたじろいだ。

近づいてよく見るとウツボだった。

 これは仕留めるチャンスなのかもしれない。

潮溜まりなら逃げ場もないだろう。

ただ、わたしは 銛を持っていない。
それから、獲物も仕留めたことがない。

ウツボは凶暴そうだし素手では厳しいだろう。

下手に手を出すことはやめて、居所を凝視し、相方が海から戻るのを待つことにした。

、、、正直なところ、銛を持っていたとしても真っ向勝負で銛を突き刺すなんてことは勇気がなくてできなかっただろう、、


水から上がる音がした。

ウツボのことを伝えると、すぐさま獲物に向かう。

岩陰の下に隠れていたはずが、いつの間にどうやって移動したのか、少し離れた別の穴から顔を覗かせた。

向こうもこちらの存在に気づいたようで、わたしを睨み、口を開けて威嚇する。

ほかの魚ならこちらの存在に気づけば逃げるものなのに、一歩も引かず立ち向かうなんて。
なんて堂々とした魚だろう。


そして、その横から相方が銛で狙いを定める。


 緊張した空気が張り詰める。


一撃だった。

首にしっかり命中した。

ウツボはのたうち回る。

銛にギュっと体を巻きつけた。

蛇のようだ。

刺されても、口を開けて怒っている

指で解こうとしても全く緩まない。

かなり強い力だ。

ウツボの防衛本能らしい。

これをほどくためには息の根を止める必要がある。



ナイフで目玉を刺した。

そうしてみるみる内に力を失い、銛に絡ませた体が緩んだ。

体を伸ばしてやる

海水で流れた血と、ぬめりを洗う



あれだけ急所を刺されても、しばらくの間、ウツボは生きていた。

なんて生命力の強い生き物なんだろう。


突き刺されても尚、闘争心むき出しで、死に物狂いに暴れていたウツボという、この海の生き物が、海の世界の厳しさを物語っている気がした。


その一部始終はショッキングでもあった。
だけど、目の前で殺された生き物を後で美味しいと言いながら食べている自分を想像すると、この一連の流れに対して目を逸らすことの方が生を全うしたウツボに対して失礼だと思った。

むしろ自分の手を汚さずに、可哀想だという気持ちも抱きながら、ただ死ぬまでを眺めていたのに、この生き物を食べようとしている自分がずるい。

これじゃあいいとこ取りじゃないか。

 自分でできることなら自分ですべきだという気持ちが掻き立てられた。

正々堂々と海の中で戦い、自分の手で獲物を仕留める必要がある。

それには少なからず危険が伴い、こっちだって命がかかってくる。

それが生き物の世界では当たり前だし、本来、捕食者になるということはそういうことだと気付かされる。

せめて、自然の中に加わるあいだは食べることに責任を持ちたい。













2015年5月16日土曜日

式根島キャンプー2日目ーその1【吹の江】

式根島に来て2日目。
いい天気。
この日は吹の江に行ってみることにした。

吹の江はキャンプ場に面している海岸の隣に続く入江だが、入っていく場所がわかりづらいらしい。

釣りのスポットとして知られているので 釣り人はそこへ行くようだけど海水浴場にはなっていないようなので、この季節泳いでいる人はまずいないだろう。

しかし、そうとう綺麗な場所らしい。
人があまり入らないだけ環境が保たれているのだろうか。



吹の江の行き方をブログに書いてくれていた人がいたので、それを参考に向かってみたがやっぱり入り口が非常にわかりづらく、随分彷徨った末、入江への道を見つけることができた。

藪漕ぎしていくと見晴らしのいい、崖っぷちの道に出た




吹の江に着いた


楽園って、こういうところをいうのだろうか。

色とりどりの苔、海藻、珊瑚、海の生き物。

かといって、陸地の植物のような派手さはないのだが、海独特の色彩の、華やかな世界が広がっていた。


地上から浅瀬を見下ろすと水中の様子がよく見える
水面の揺らめきと水中に散る小さな魚の群れ、海藻の色彩が相まった景色になっている



海に潜ってみると海藻がかなり茂っていて、思ったよりも深さがあった。

海藻の茂みの上を泳ぐ。

森の上を散歩しているような感覚だ。
 上から茂みを眺めるという立ち位置は空を泳いでいるような、なんとも不思議な感覚になる。

たまに浅くなると海藻の森のなかに分け入っていくように泳ぐ。

この環境は陸上の森にも似ていて、また、この水中散歩は森の中で散策する感覚にも近いと思った。


今回海に潜るまで、泳ぐことは肉体を駆使し、疲れてしまうような運動だと思っていた。
それは今までわたしが水泳の感覚で接し、ゴーグルをつけ、上手じゃない息継ぎで海水を飲み込んでしまいながら泳いでいたからだろう。(なので磯遊びの方が好きだった)

シュノーケルをつけて、水面に浮かび、脈拍を穏やかにし、漂うように腕や足を動かす。
疲れを感じることはなく、ただ浮かんで眺める景色がこんなに美しく、楽なことだとは思ってもみなかった。
そして、水中の散策に没頭できるのだ。



海は果てしない。

水面に浮かび、深いところを眺めても、深すぎると海底は見えない。

わたしには計り知れない深い海だってある。

海のもっとも深いところなんて、人間は行くことができない。

宇宙にさえ、人は行っているのに。

深海一万メートルにはどんな世界があるのだろう。


もし、海の水がなくなったら、どんな森が現れるのだろうか。


潜らないとわからない、海の世界が気になる。



2015年5月10日日曜日

式根島キャンプー1日目ーその4 【渡り蟹のパスタ】

キャンプ場に戻り、着替えを済ませてから早速調理に取り掛かる。

手のひらに収まるサイズのカニたちはまだちゃんと生きてくれていた。

それを丁寧に一匹ずつ、オリーブオイルを熱したコッヘルに入れる。
はじめはじたばた抵抗するが、すぐに力を失い、息絶えて、殻の表面が赤くなる。

現地で生き物を調達して食べるとき、死の瞬間はつきものだ。
その瞬間に立ち会うとき、毎回どぎまぎしてしまうのだが、冷静を装うようにしている。
 自分が捕食者である以上、最初から最後まで対象と向き合うことが食べることだと思っている。
日常の生活ではそれがままならないが、野外で活動しているあいだはそれを積極的にしたいと思っている。
単純に、採れたてのものをおいしく調理して食べるということが幸福だということでもあるけれど。



完全に火を通し、殻がカリカリの素揚げ状になったところでヘラで潰す。
 カニ味噌の旨味と油をよく絡ませる。

4匹のカニを全て揚げたらそこらへんに生えている浜大根の実をむしり、一緒に炒め合わせる。

少し塩を振って出来上がり。

式根島キャンプー1日目ーその3 【ロッククライミング】

海岸の岩場歩きは面白い。

山はここ数年よく行っているので山の岩場なんかは歩き慣れているけれど、ここの海岸の岩場は山のそれとは別物で、火山岩だからか岩が崩れることもなくて歩きやすく、凸凹の引っ掛かりがたくさんあるから登りやすい。
 天然のボルダリングジムだ。

それでも天然だから登りづらい難所もいくつかあるし、下は深い海で落ちたらまずい箇所もいくつかあったので悪戦苦闘しつつなんとか進む。





中の浦の海岸に回ることはできた。
けど、大浦の海岸とあまり変わり映えしないかな、、という感じでカニを数匹と亀の手を採って元来た道を帰る。


帰りはなぜか行きよりも歩きやすかった。
コツをつかんだのかしら?来るときにここはヤバイ!と思った難所も冷静に足と手を置く場所を選べばそこまで難しいものでもなかったようで。
もう無理だ!と思ったときも探して頭と体を駆使すれば意外と突破できるんだなぁと実感。

大浦海岸に戻ると、行きよりも潮が満ちていて、歩いて通れた岩の道がなくなっていた。
泳いで帰るしかない。

動いて体はあったまっていたのでまた海に入ることはしんどくないが、保温ジャケットや濡らしたくないものが入ったザックを背負って泳がなければならなかったので気をつける必要があった。

ザックの内側は防水コーティングされていて、 さらに防水性の高いスタッフサックを二重にしてしまっていたので大丈夫だとは思うが完全防水の生地ではないので極力海水につけないようにする必要はあった。

背泳ぎで、ラッコみたいにおなかに荷物を持って運ぶ方法を考えたがなんだかうまくいかなかった。

いーや、もう。という気持ちで結局そのまま背負ってなるたけ沈まないようにして泳いでいくことにした。


陸地にたどり着いて確認してみたら、外のザックは結構濡れてしまったが中までは浸透していなかった。
作戦成功?

2015年5月9日土曜日

式根島キャンプー1日目ーその2

ランニング用のロングスパッツに、それと似たような素材のフィット感のあるTシャツとアームウォーマーを着用する。それから沢足袋に、ホームセンターで買ったネオプレンのグローブ。

そんな格好。

ウェットスーツやマリンスポーツ用の衣類は持っていないしわざわざ今回のために用意はしなかった。

ちょっと海入ってカニとか採りたいなぁってぐらいのノリだったので。

相方はラッシュガードみたいな沢用のロングスパッツで少しは防寒できてるけどだいたいわたしと同じ格好で。

でも魚突きたい気持ちもあったので銛は持ってきたようだ。


潜りやすいポイントまで岩を伝って歩いていく。
この時期の水温はまだ低いのでなるたけ海水に浸からないようにする。

それにしても、本当に綺麗な海。
南国の海遊びは今までしてこなかったからだと思うけど、こんなに透き通った青い海に入るのは初めてかもしれない。


いいポイントの岩場に着いた。
少し海水浴場から離れたので人の介入が少ないのか水草が濃く、岩の色や透き通った海の色がなんとも言えない色彩。

背負っていたザックを降ろして海の中を覗いてみる。
吸い込まれそうだ。


足を恐るおそる水面に入れてみる。
ひやりと冷たい。

一度足を陸地に戻し、一呼吸。
それからえいやっと両足を海水につけ、腰まで滑り込ませる。

うーわー。むちゃくちゃ冷たい。
が、勢いで 上半身まで浸かってしまう。
それからシュノーケルをした顔を水につけ、体を水面に預ける。

体から力が抜けてふわっとする。
もう、こっちのもんだ。

シュノーケルで海の中を眺めると、意外に深く、海底には海藻が茂っている。
陸から眺めるよりも美しい世界が広がっていた。

ゆるく泳ぎながら漂ってみると熱帯地域にいそうな色彩の小さな魚がたくさん泳いでいる。
蛍光色のような薄水色の珊瑚礁もいたるところにあり、鮮やかで、華やかで、こんな海を泳いだのはやっぱり初めてだった。


水の中にいると意外に寒く感じなくなるが、それでも10分も泳いでいると体の冷えが伝わってくる。

海から出ると、さっきまで暑くて心地よかった風がすごく冷たく感じ、体が震えてくる。
 海から上がってきたときのために持ってきておいた保温のジャケットをはおると少しマシになった。持ってきておいてよかった。

相方も海から上がってきて、採れそうな獲物はいなかったので岩を伝って隣の中の浦海岸に移動することにした。





式根島キャンプー1日目ーその1

キャンプ場に到着して、受付を済ます。

式根島にはキャンプ場が2箇所あるけれど、ゴールデンウィークと7・8月は大浦キャンプ場でしか泊まれないことになっている。
どちらも無料で、水や炊事場もあるので連泊のキャンプには向いていると思う。

ただ、混み具合はハンパない。

キャンプ場の敷地は結構広いけれど、どこもかしこもテントで埋まっている。

2人で手分けして場所探しをして、まぁここが一番いいかな、と思える場所に落ち着いた。
角のスペースだからテントで遮ってプライベートの空間が作れるし、海から一番近い場所だ。

テントを張ってザックから荷物を出して、これから4日間生活するテント内のしつらえをする。
クーラーボックスなどは持ってきていないので食料などもなるたけ傷まないように比較的涼しいところに置いておく。


一息ついたところで眠気が、、
船の中で寝たとはいえ、前日の寝不足と暑さで疲れが出たのかちょっとお昼寝。
キャンプ場は砂地になっているので木陰にマットをひいて横になるだけで気持ちいい。
春と夏のあいだに吹くような心地よい風が顔を撫でる。


そうして少し眠って、目が覚めたら空腹だったので少し早めの昼ごはんを取る。

島に来る前に有楽町のおいしいパン屋さんで買ってきたバゲットにスライスした新玉ねぎとベーコンと目玉焼き、チーズを挟んで食べた。

それぞれの素材が元々おいしいってこともあるけど、こうやって砂浜の木陰で調理して食べるのは格別においしいと思う。


船の移動疲れと眠気はまだあったけれど、最高に海日和の天気で、目の前には海があったので入らずにはいられなかった。

式根島キャンプ 【移動の船旅】

ゴールデンウィークの休みを利用して4日間、式根島で過ごしました。

式根島は、伊豆七島のうちのひとつの小さな島。自転車だったら1日でまわれてしまう。
はじめは自転車を借りてしまおうかとも考えていたけど、結局最終日まで借りることには至らなかった。


前日の夜、竹芝から出航する「さるびあ号」に乗船し、8時間の夜間の船旅なので朝までがっつり眠りました。

 
さるびあ号のデッキから見えるレインボーブリッジ


朝になって目が覚めて、デッキに出てみる
船から見えた島



式根島が見えた

船と港を接続する橋を渡そうとしている


朝、8時半頃、式根島に到着。
もう太陽はずいぶんと昇っていて日差しが暑い。

役場で島の地図を物色し、主だったものをいただいてから 大浦キャンプ場を目指す。