2015年12月11日金曜日

記事を掲載していただきました

先月のことになりますが、TANPENアワード受賞の件で青葉区版タウンニュースに取材していただき、記事を掲載していただきました。

「冒険エッセイ」で大賞



受賞作品が掲載されている「とつげき!シーナワールド!!4」を持って、写真も撮っていただきました。

また、「人物風土紀」という記事でも取り上げて下さっています。
公募新人短編文学賞「第1回TANPEN AWARD」大賞を受賞した 阿部 静さん

ほぼ初めての本格的な取材にどきどきしてしまい、ずいぶんといろいろなことを聞かれ、素直に包み隠さずお話した次第でございます。。

このような記事が上がってきて、ほほぉ〜なるほど、という感じでした、よ。

2015年12月6日日曜日

第1回TANPEN AWARD大賞受賞のお知らせ

先日、クリーク・アンド・リバー社主催の冒険エッセイを募集する
「第1回TANPEN AWARD」にて大賞を受賞させていただきました。

 『第1回TANPEN AWARD』 大賞受賞作品 決定! 椎名誠氏が選出した稀代の"冒険ガール"が作家デビュー!

 わたしは美術をやる傍ら、相方と細々と旅をし、今年から細々と旅での経験をこのブログに書き始めたわけですが、3月のアタマに雪洞とイグルーを作って旅をすることをして、それはわたしにとって結構なことを成し遂げたわけで、いてもたってもいられなくなり、しっかりと文章に書いておこうと思ったのです。
なので、そのことについてはこのブログには一切載せていません。
ブログに書くというよりも、エッセイのかたちをとった作品に落とし込みたいと思ったので。
 書くならば、と思い、エッセイの公募に出してみようと思い立ちました。
対象がわかる相手に向けて書いた方が気合が入るし、期限があったほうがダラけなくていいかと思ったので。それから賞とか取れちゃったりしたらいいなぁなんていう期待も込めて。笑
 でもエッセイのコンペってそんなに多くないってことがわかったんです。
小説とか絵本とかならいろいろあるようだけど、エッセイとなると見つけても、大概テーマがあったりして、そのテーマに沿ったかたちで書かなきゃならなかったりして。
このテーマならいけるかなぁと思ったものもあったのだけど、やっぱりどうもしっくりこなくて踏みとどまって。
 そんなこんなでちょこちょこ文章を書き始めつつ公募を探していたときに見つけたんです。

【作家 椎名誠氏が審査 公募新人短編文学賞 『第1回TANPEN AWARD』
次世代を担う 「冒険エッセイスト」 求む】


 これだーー!!
っていう出会いでした。
いや、わたしがやったことは「冒険」って言えるほどの大それたことはやっていないんです。
しかし、ほかにしっくりくるようなコンペはなさそうだし、見方によっては「冒険」と取れるかもしれないと思い直したりして。
とにかく、これに向けて書いてみようと思ったんです。
なんてったって椎名誠さんが審査員とか。これは出すしかない!と心に決めて。

どうにかかたちにして、わたしが持てるものを出し切った感はなんとなくありました。
が、、送ったあと、よくよく考えて、まぁ甘い期待は持たないほうがいいだろうと。
きっと百戦錬磨の冒険家とか、すごい書き手も応募しているに違いないと。
 そんな考えが頭の中を占めたので、緩やかに忘れさっていったのです。
・・・やっぱり甘い期待もほんのりと抱きながら。笑 
本当に少しだけ。アタマの隅っこにね。。

そして真夏の西日本の旅の途中、ついに事は動き出したのです。
そう、甘い期待が現実になったのですよ。。!!
そのときのことを簡略的に言うならば、ビックリ仰天です。笑
、、しかし実のところ、そのときはなんだか現実味がなく、自分のことではないような気がしてずっと素直に喜べなかったのですが。。
まあ、いろいろな記憶をひっくるめて思い起こすと、やっぱりかなり衝撃的ではあったようです。自分史上初の快挙ですし。。照


そんなわけで、ドカンと大賞受賞させていただきまして、椎名誠さんがプロデュース
する雑誌「とつげき!シーナワールド!!4」にも受賞作品を掲載させていただいてます。

 旅ゆけばヒトモノケモノバケモノと会う とつげき! シーナワールド! ! 4 単行本

アマゾン、 紀伊国屋書店、丸善ジュンク堂書店、文教堂などでお買い求めできますのでよろしくお願いします。


この賞を受賞するとともに作家デビュー?させていただきましたので、多くの皆様に読んでいただけますよう正々堂々と書いてゆきたいと思います。

このブログもうまく使えずに未だにあんまり機能させていないのですが、、汗
これを機に、もっとブログよりなツールとして定期的に旅のことや、その準備やら、また、旅に通ずる日常の暮らしのことなどを肩肘張らずに書いていきたいと思います。
・・・そもそも今まではこのブログに旅の記録をがっつり書いてたからどうも気張っちゃってあんまりうまく使えてなかった気がするのです・・・

まぁ、気を取り直してばしばしと綴っていきたいと思います!

なにとぞよろしくお願いいたします。


阿部 静



2015年9月26日土曜日

高島トレイルー駒ケ岳〜百里ヶ岳

高島トレイルを少しだけ歩いた。

高島トレイルは琵琶湖の西側にある高島市から京都へ抜ける尾根伝いの山道で、中央分水嶺となっている山脈でもある。
今回は山に入っていられるのが3日間だけなので、80キロほどあるトレイルを全部歩くことはできないから興味を引いたブナの原生林が多いエリアである駒ケ岳・百里ヶ岳を歩くことにした。
それからネットで調べていて、偶然写真で見つけた美しい森があった。京都大学の研究林である芦生原生林だ。そのエリアは高島トレイルを外れるが歩いてみたくなったので百里ヶ岳から天狗岳を経由して研究林を通り下山するルートを立てた。

夜行バスで京都に朝到着し、それから電車とバスをいくつか乗り継いで駒ケ岳の登山口である木地山に着いた頃には13時をまわっていた。乗り継ぎの時刻は全部調べてきたので予定通りだ。
登山口は畑になっていて、しかも獣除けの網が張ってあり分かりづらかった。
最後に乗り継いだ市営バスの乗客はわたし一人だけで、気のいい運転手のおじさんと行きすがら会話をした中で登山口の分かりづらさについても教えてもらっていたので迷わなかったが、その情報がなければ明らかに戸惑っただろう。

山に入ってからすぐに沢で水を汲んだ。地図を見ると最初の沢からテン泊予定地まで水場がなさそうなのだ。(しかし進んでみると尾根に登る手前までずっと沢沿いの道だったので後で後悔することに。。)
今回のために買った携帯浄水器が早速活かされると思うとちょっとわくわくした。
手に入れた浄水器はSAWYERというものでコンパクトだし山で使っている水汲みボトルやペットボトルの口にも接続可能なので流用性があって便利だと思う。
これで沢水を飲んでいいのか少し心配になるほどちゃっちい見た目だけど有害なバクテリアなどは全部フィルターでカットしてくれるという説明がちゃんと書かれていたので信用してがぶがぶ飲んじゃうことにした。

このへんの山はあまり登山者がいないのか或いは自然保護の意識が高いのか、日本アルプスのような過剰な道標はない。しかも全体的に低い山なので地形を目で確認するのは難しく、広葉樹の広がる木々が茂った山なので迷い易い。コンパスと地図、或いはGPSが必須だ。


わたしは尾根に上がるまでのあいだ、さっそく道を間違えて登山道からズレてしまい、踏み跡のないズルズルの傾斜を足で少しずつ削ってちょっとずつ登ってはGPSで方向を確認しながら進むという余計に体力と神経を使うことをしてしまった。
しかし尾根に上がってしまえば必然的にルートに合流することになるので心配することはなかった。しかも尾根道は遮るものもないのでわかり易い。もう変な迷い方をすることはないだろう。
少し汗をかいた体に尾根特有の強い風が当たり心地よく感じる。

さっそくブナ林が現れた


尾根道は上がるまでの山道に比べれば急勾配の坂はあまりないので余裕ができ、まわりの景色を観察できるので楽しく歩ける。
キツイ山道をはぁはぁ言いながら登っているあいだはいつも景色なんか見ている余裕はないのでストイックな行為に感じてしまう。だから朗らかな気持ちで歩きたい時はできるだけ登るばっかりの山は避けたいのだ。(←軟弱?笑)
疲れなければ多くの発見がある。標高の高い山の景色はそりゃあ素晴らしいものだけれども。
疲れずに歩きたいということもあるが最近は広葉樹の深いシンとした、美しい森に魅力を感じるのでそういうところを歩こうという心境になる。


美しいブナの森というのはきれいな沢が流れていてたくさんの植物や動物の住処でもある。目で楽しむことができるし、生き物の気配も感じる。
そして勿論クマだっている。
このエリアは自然が深いだけクマもたくさん棲息していると聞いていたのでちょっとどきどきしていた。クマの爪痕が残された木も所々に点在しているので確実にクマがいることがうかがえる。身の危険に晒されない距離でだったら見てみたくもないが鉢合わせたくはない。(っていうか鉢合わせたら死ぬ。苦笑 まずないとは思うけど)
なので今回は一人山歩きということもあり、できるだけリスクを回避するためにもクマ鈴を手に入れてつけて歩いてみた。
あんまり大きいのはなんだか恥ずかしいので控えめに中くらいのにしてみたら山の中では思ったよりも響かず頼りない感じがする。でもないよりマシだ。

おそらくクマの爪痕。時間が経ったものなのか、削られた部分が赤く変色している。
途中で後ろからゴロンゴロンと低い鈴の音がした。驚いて振り返るとトレラン風の格好のお兄さんが見えた。この山に入って初めて会った人だ。
少し話してから爽やかにわたしを抜いていった。
ザックに付けた大振りのカウベルはお兄さんの姿が見えなくなっても響いていた。完全にわたしの鈴の音はかき消されてしまっていたのでそのサイズにすればよかったのかと後悔しながら音を見送った。
後からふと思ったが、ザックの容量はわたしと同じくらいで歩くテンポと雰囲気からして、もしかしたら高島トレイルを全踏破しようとしているんじゃないかと思われるような感じ。勝手にそう思い込み、ちょっと尊敬した。

駒ケ岳を過ぎて、1日目の目標は木地山峠辺りまで歩くことだった。タイムリミッドは暗くなる頃の18時まで、或いは疲れて歩きたくなくなるまでとした。
木地山峠までの道は地図に迷い易いと記されていて、記載通りに何度か道を間違えた。
その付近はシダ類の植物が腰の辺りまで茂り、尾根の形がわかりづらくなっているのだ。
それで尾根だと思って進んでいくと変に下っていくような、あれ、おかしいなという雰囲気になり、GPSで確認してみると違う尾根を下ってしまっているということが発覚し、また登り返して軌道修正するということを何度かやった。
そんなことで時間をくってしまったので木地山峠には届かないかなと思っていたら案外予定よりも早く着くことができた。
その付近はテン泊適地との情報があったのでその辺りで張ることを想定していた。腐葉土の開けた平な地面が多かったのでやはりバッチリ適地であった。
時間的には17時過ぎと予定より少し早いが先に伸びる尾根道を見ると地面の面積は狭まるようだ。地図を見てもそれが分かるので地形的にはここで張ることがベストに思える。
しかしひとつ不安なのが付近にクマの爪痕が残されている木が多くあることだ。しかもまだ新しいように見えるのでこの付近にいる可能性がある。
歩みを進めてテントが張れない場所で暗くなることと天秤にかけてみたがちゃんとした地面で張れることを優先することにした。
何よりも体が思った以上に疲れていて休みたいと言っている。
クマに鉢合わせたらそれも運命、わたしの運が悪かったと思うことにしようと自分に言い聞かせた。
それでもできるだけ爪痕のある木から距離を置いた場所にテントを張った。
食事もテント内ではとらずにテントから少し離れた場所で調理して食べた。
でも本来は100メートル以上離れた場所じゃないと意味がないらしいので気休めにしかならないが。。
クマの活動時間は夕方と朝方だと聞いたことがあるので外で調理をするあいだもクマに自分の所在を知らせるかのように大声で歌ったり大げさに音を鳴らしたりして過ごしていた。 誰も居ない山だからこそ誰の迷惑にもならないが生き物にとってはいい迷惑だっただろう。笑

テントに入ってからの夜は長く、ローソクを灯し、ワインを飲みながら本を読んで過ごした。
ワインのおかげでウトウトしてきたので時間も丁度いい、よし寝よう、と思って寝袋にすっぽり入って寝に入る。そうすると、外の音が異様によく聞こえ、風の音が生き物のざわめきのように聞こえるのだ。外の世界が見えないので風で木々が擦れる音なのか、本当に生き物が動き回り、近くにいるのかは分からない。ただ、分からないからこそ音の正体が気になり出し、想像が掻き立てられ不安が募ってくる。そして眠れなくなるのだ。
そういう時は自己暗示をかけて不安をなくし、あとは何も考えないようにする。
それはなかなか難しいことなのだが、気づいたら何度か浅く眠った感覚はあった。

近くで獣の鳴き声がした。仔鹿なのか仔熊なのか、わたしには母親とはぐれた子どもの鳴き声に聞こえた。仔熊だったらと思うと怖くなり身を潜めたが、その甲高い鳴き声がいつまでも止まないのでなんだか可哀想になり恐怖も薄れていった。そしていつの間にか眠っていたようだ。次に眠りが途切れたときには鳴き声も止んでいて、体を横にしているのもそろそろ辛くなってきた。
時計を見たら3時過ぎを回っていたのでもう起きてしまうことにした。

テントの隙間から外を覗くとまだ真っ暗だった。
夜の森を直視すると不思議と恐怖は消えた。
眠れなければ歩き出してしまえばいい。よし、初めてのナイトトレッキングを楽しんで朝日を山頂で拝もうじゃないか、という気分になった。
それにしてもまだ時間があるので体を緩めながらゆったりとパッキングを始めた。
ざっくりパッキングをし終えてテントの外に出るとひんやりとした空気が気持ち良い。
真夜中の森もなかなかいいじゃないの。
準備体操をするようにテントを撤収し、全部のものをザックに詰めたらナイトトレッキングに出発した。

ヘッドライトを頼りに歩くが足元しか見えず、まさに一寸先は闇。
ただのまっすぐな尾根の一本道なのにどこを歩いているのか分からないのでiPhoneのライトでも照らしたら少しマシになった。
帰ったら、もっと明るく照らしてくれるヘッドライトに買い換えようと思った。

ライトを照らしたところの木の生え方と地面の状態を見て進む方向を判断した。
ところが分かりづらいところはいくつかあっていつのまにか尾根からズレて山の斜面を歩いていたりするのだ。気づいたらGPSを見て道に戻る。
さらに先へ進むと地形も紛らわしくなってきて尾根の方向も何度か間違えた。
暗いと余計迷いやすいので逐一GPSで確認しながら進んだ。

日中に歩くときの倍ほどの時間をかけて峠を歩いた。
山のかたちが見えないことがこんなに苦労することだとは思わなかった。
空が白み始めて徐々に回りの景色が見えるようになってくるのが嬉しかった。
なにか生き物のようなうめき声が聞こえるが気にならなかった。
もうクマなんてどうでもよくなっていた。

次第に空は明るくなり、美しいブナ林を登っていることに気がついた。
朝靄に包まれ、森全体が瑞々しかった。



山頂の手前で木々の切れ間からちらっと朝日が見えた。
 覗いてみると雲海のような靄が低い山々の上を覆っている。
どうやら山頂で朝日を拝むことは叶わないようだけど、今見えているこの景色で十分だった。



百里ヶ岳の山頂は開けていて苔や小さな植物が生えていて、なんだか可愛らしい場所だった。ここでテントを張ってもよかったのかもしれないとふと思った。



そして登る途中で気づいてしまった失敗。
それは水が足りないということ。
この先4時間ほどの峠道を歩き、三国峠を下るまで水場はないのだ。
4時間も歩くとなると一度食事を取らなければきつくなる。だが炊事をするほどの水が残っていないのだ。
この道のりを残りの水だけでやり過ごすほど今のわたしには体力が残っていないと感じた。
もう一つの選択肢である百里ヶ岳から下山するルートを行くしかなかった。
下山するとすぐに沢にぶつかるのでそこで水を確保してからまた登っていくこともできる。
しかし水が足りないとわかったとき、もう今回はこれで充分だと思った。
美しいブナの森を随分歩いた。朝日も雲海も見れた。
体が、もう充分だと言っている。
本音のところ、今回はもう無理をしたくない。

よし、帰ろう。

次に来るとしたら紅葉の時季に訪れよう。

2015年5月17日日曜日

式根島キャンプー2日目ーその2【ウツボを捕る】

吹の江の海の中はあまりにもきれいだったので泳いでいるのが楽しくて、いつまでも泳いでいられる気がしたが、それでも体の冷えは感じるものだ。


海から上がるとすぐに全身が震えだした。



体に当たる風が冷たい。

荷物を置いている岩場に戻り、保温用に持ってきた化繊ジャケットを羽織る。
それでも震えは止まらないので岩の上に俯せに寝転がってみた。

岩が溜め込んだ太陽光の熱を感じる。
あたたかい。

風は強いが幸い陽は照っていて、寝転がっていると岩の熱と太陽の日差しが体を少しずつあたためてくれる。

そうして体を暖めながら岩場をごろごろし、目先にある潮溜まりの中をなんとなく眺めていた。

すると、岩の間を長いなにかがにょろっと通った。

ぼーっとしていたので何者なのか分からずたじろいだ。

近づいてよく見るとウツボだった。

 これは仕留めるチャンスなのかもしれない。

潮溜まりなら逃げ場もないだろう。

ただ、わたしは 銛を持っていない。
それから、獲物も仕留めたことがない。

ウツボは凶暴そうだし素手では厳しいだろう。

下手に手を出すことはやめて、居所を凝視し、相方が海から戻るのを待つことにした。

、、、正直なところ、銛を持っていたとしても真っ向勝負で銛を突き刺すなんてことは勇気がなくてできなかっただろう、、


水から上がる音がした。

ウツボのことを伝えると、すぐさま獲物に向かう。

岩陰の下に隠れていたはずが、いつの間にどうやって移動したのか、少し離れた別の穴から顔を覗かせた。

向こうもこちらの存在に気づいたようで、わたしを睨み、口を開けて威嚇する。

ほかの魚ならこちらの存在に気づけば逃げるものなのに、一歩も引かず立ち向かうなんて。
なんて堂々とした魚だろう。


そして、その横から相方が銛で狙いを定める。


 緊張した空気が張り詰める。


一撃だった。

首にしっかり命中した。

ウツボはのたうち回る。

銛にギュっと体を巻きつけた。

蛇のようだ。

刺されても、口を開けて怒っている

指で解こうとしても全く緩まない。

かなり強い力だ。

ウツボの防衛本能らしい。

これをほどくためには息の根を止める必要がある。



ナイフで目玉を刺した。

そうしてみるみる内に力を失い、銛に絡ませた体が緩んだ。

体を伸ばしてやる

海水で流れた血と、ぬめりを洗う



あれだけ急所を刺されても、しばらくの間、ウツボは生きていた。

なんて生命力の強い生き物なんだろう。


突き刺されても尚、闘争心むき出しで、死に物狂いに暴れていたウツボという、この海の生き物が、海の世界の厳しさを物語っている気がした。


その一部始終はショッキングでもあった。
だけど、目の前で殺された生き物を後で美味しいと言いながら食べている自分を想像すると、この一連の流れに対して目を逸らすことの方が生を全うしたウツボに対して失礼だと思った。

むしろ自分の手を汚さずに、可哀想だという気持ちも抱きながら、ただ死ぬまでを眺めていたのに、この生き物を食べようとしている自分がずるい。

これじゃあいいとこ取りじゃないか。

 自分でできることなら自分ですべきだという気持ちが掻き立てられた。

正々堂々と海の中で戦い、自分の手で獲物を仕留める必要がある。

それには少なからず危険が伴い、こっちだって命がかかってくる。

それが生き物の世界では当たり前だし、本来、捕食者になるということはそういうことだと気付かされる。

せめて、自然の中に加わるあいだは食べることに責任を持ちたい。













2015年5月16日土曜日

式根島キャンプー2日目ーその1【吹の江】

式根島に来て2日目。
いい天気。
この日は吹の江に行ってみることにした。

吹の江はキャンプ場に面している海岸の隣に続く入江だが、入っていく場所がわかりづらいらしい。

釣りのスポットとして知られているので 釣り人はそこへ行くようだけど海水浴場にはなっていないようなので、この季節泳いでいる人はまずいないだろう。

しかし、そうとう綺麗な場所らしい。
人があまり入らないだけ環境が保たれているのだろうか。



吹の江の行き方をブログに書いてくれていた人がいたので、それを参考に向かってみたがやっぱり入り口が非常にわかりづらく、随分彷徨った末、入江への道を見つけることができた。

藪漕ぎしていくと見晴らしのいい、崖っぷちの道に出た




吹の江に着いた


楽園って、こういうところをいうのだろうか。

色とりどりの苔、海藻、珊瑚、海の生き物。

かといって、陸地の植物のような派手さはないのだが、海独特の色彩の、華やかな世界が広がっていた。


地上から浅瀬を見下ろすと水中の様子がよく見える
水面の揺らめきと水中に散る小さな魚の群れ、海藻の色彩が相まった景色になっている



海に潜ってみると海藻がかなり茂っていて、思ったよりも深さがあった。

海藻の茂みの上を泳ぐ。

森の上を散歩しているような感覚だ。
 上から茂みを眺めるという立ち位置は空を泳いでいるような、なんとも不思議な感覚になる。

たまに浅くなると海藻の森のなかに分け入っていくように泳ぐ。

この環境は陸上の森にも似ていて、また、この水中散歩は森の中で散策する感覚にも近いと思った。


今回海に潜るまで、泳ぐことは肉体を駆使し、疲れてしまうような運動だと思っていた。
それは今までわたしが水泳の感覚で接し、ゴーグルをつけ、上手じゃない息継ぎで海水を飲み込んでしまいながら泳いでいたからだろう。(なので磯遊びの方が好きだった)

シュノーケルをつけて、水面に浮かび、脈拍を穏やかにし、漂うように腕や足を動かす。
疲れを感じることはなく、ただ浮かんで眺める景色がこんなに美しく、楽なことだとは思ってもみなかった。
そして、水中の散策に没頭できるのだ。



海は果てしない。

水面に浮かび、深いところを眺めても、深すぎると海底は見えない。

わたしには計り知れない深い海だってある。

海のもっとも深いところなんて、人間は行くことができない。

宇宙にさえ、人は行っているのに。

深海一万メートルにはどんな世界があるのだろう。


もし、海の水がなくなったら、どんな森が現れるのだろうか。


潜らないとわからない、海の世界が気になる。



2015年5月10日日曜日

式根島キャンプー1日目ーその4 【渡り蟹のパスタ】

キャンプ場に戻り、着替えを済ませてから早速調理に取り掛かる。

手のひらに収まるサイズのカニたちはまだちゃんと生きてくれていた。

それを丁寧に一匹ずつ、オリーブオイルを熱したコッヘルに入れる。
はじめはじたばた抵抗するが、すぐに力を失い、息絶えて、殻の表面が赤くなる。

現地で生き物を調達して食べるとき、死の瞬間はつきものだ。
その瞬間に立ち会うとき、毎回どぎまぎしてしまうのだが、冷静を装うようにしている。
 自分が捕食者である以上、最初から最後まで対象と向き合うことが食べることだと思っている。
日常の生活ではそれがままならないが、野外で活動しているあいだはそれを積極的にしたいと思っている。
単純に、採れたてのものをおいしく調理して食べるということが幸福だということでもあるけれど。



完全に火を通し、殻がカリカリの素揚げ状になったところでヘラで潰す。
 カニ味噌の旨味と油をよく絡ませる。

4匹のカニを全て揚げたらそこらへんに生えている浜大根の実をむしり、一緒に炒め合わせる。

少し塩を振って出来上がり。

式根島キャンプー1日目ーその3 【ロッククライミング】

海岸の岩場歩きは面白い。

山はここ数年よく行っているので山の岩場なんかは歩き慣れているけれど、ここの海岸の岩場は山のそれとは別物で、火山岩だからか岩が崩れることもなくて歩きやすく、凸凹の引っ掛かりがたくさんあるから登りやすい。
 天然のボルダリングジムだ。

それでも天然だから登りづらい難所もいくつかあるし、下は深い海で落ちたらまずい箇所もいくつかあったので悪戦苦闘しつつなんとか進む。





中の浦の海岸に回ることはできた。
けど、大浦の海岸とあまり変わり映えしないかな、、という感じでカニを数匹と亀の手を採って元来た道を帰る。


帰りはなぜか行きよりも歩きやすかった。
コツをつかんだのかしら?来るときにここはヤバイ!と思った難所も冷静に足と手を置く場所を選べばそこまで難しいものでもなかったようで。
もう無理だ!と思ったときも探して頭と体を駆使すれば意外と突破できるんだなぁと実感。

大浦海岸に戻ると、行きよりも潮が満ちていて、歩いて通れた岩の道がなくなっていた。
泳いで帰るしかない。

動いて体はあったまっていたのでまた海に入ることはしんどくないが、保温ジャケットや濡らしたくないものが入ったザックを背負って泳がなければならなかったので気をつける必要があった。

ザックの内側は防水コーティングされていて、 さらに防水性の高いスタッフサックを二重にしてしまっていたので大丈夫だとは思うが完全防水の生地ではないので極力海水につけないようにする必要はあった。

背泳ぎで、ラッコみたいにおなかに荷物を持って運ぶ方法を考えたがなんだかうまくいかなかった。

いーや、もう。という気持ちで結局そのまま背負ってなるたけ沈まないようにして泳いでいくことにした。


陸地にたどり着いて確認してみたら、外のザックは結構濡れてしまったが中までは浸透していなかった。
作戦成功?